ヘッドボイスとファルセットの声質がどう違うのか、混乱している人も多いでしょう。どちらも和訳すればまず裏声と訳されますから。
ボイトレで分類される声質の種類
ボイトレの説明で分類される代表的な声質パターン、次の四種類について説明します。他にも超低域のボーカルフライ、超高域のホイッスルボイスなど、変則的な発声がありますが、使う頻度はまれなのでここでは省略します。
地声・・・・・・・・声帯はタイトに閉じる。話す時の声と基本的に同じ。
ミックスボイス・・・地声とウラ声の中間的な声。ミドルボイスとも呼ばれる。
ヘッドボイス・・・・いわゆるウラ声だがシャープな質感。声帯はタイトに閉じる。
ファルセット・・・・ウラ声だがピントは甘く優しい声。声帯の閉じ方はゆるめ。
これらの声質の種類を分けているのは主にレンジ(声帯が振動する部分の長さ)と、声帯を閉じた隙間の広さです。具体的なイメージは下の声帯図をご覧下さい。
ショートニング(声帯の削減)
地声では前後に伸びた声帯の全長が振動し、ミックスボイスでは約3分の1だけが振動、ヘッドボイスではホンの一部の隙間だけに空気が通り振動します。振動部が短いと楽に高音を歌えます。
振動しない部分は完全に閉じて空気を通しません。この動きは「ショートニング」あるいは「声帯の削減」と呼ばれています。
【声帯を上から見る(上=本人にとっての前、下=後ろ)】
一般的な声帯図や写真は医学資料からの引用が多く、声帯の向きがドクター目線で記されています(患者と向き合う形)。ここでは図を見た本人が自分の声帯としてイメージしやすいよう、図の上が声帯の前(喉ぼとけ側)、図の下が後ろ(背中側)となるよう表記しました。声帯は基本的に後ろで閉じ開きします。水平(前後)方向から声帯を見たい方はミックスボイスのページで断面図を参照下さい。
ヘッドボイスとファルセットが高音を出す方法
ファルセット
ファルセットはタッチの軽さで高音を出します。
ファルセットの振動レンジは地声と同じく全長ですが、声帯の閉じ方がゆるい事と、声帯そのものの薄さで振動数を上げています。タッチが軽い分、地声のような実のある声に比べて甘めな声になります。
ヘッドボイスが高音を出す方法は全然違います。
ヘッドボイス
ヘッドボイスは振動する距離を短かくして振動数を上げます。輪ゴムを伸ばして弾いた音と途中をつまんで弾いた音の高さを聴き比べてみて下さい。
ギターの弦も巻き上げて引っ張るよりも、フレットを押さえた方が簡単に高音が出ます。
振動距離の短かさがピッチ(音の高さ)を上げる効果の大きさを認識しましょう。
ファルセットほどソフトなタッチ加減にしなくても高い周波数で振動出来るヘッドボイスは、地声と同様に声帯をタイトに閉じる事が可能です。
地声に近い声質と強さで高音が歌えるのです(ヘッドボイスの声帯は地声に比べればかなり薄いですが)。
リラックスした喉で強く歌う高音
ヘッドボイスやミックスボイスはボーカルの持つべき重要な声質です。プロもアマチュアもカラオケ初心者もそれは同じです。しっかり閉じた声帯で高い声を出すため、強くタイトに高音域を歌えます(もちろん怒鳴り声ではない)。
声帯のタイトな運動力を育てる時に気を付けたいのが、喉全体のリラックスです。
大多数の人はタイトな声質で歌おうとすると喉全体が緊張してしまいます。これを分離し、喉にはリラックスを、声帯にはテンションを整備するのがボイストレーニングです。勿論テンションとは筋肉(声帯はほぼ筋肉)の適度な張りであり、不自然な緊張とは全然違います。
ボイトレ教室に通ったり、ご自身でボイストレーニングに取り組んでおられる方は、こうした微妙な調整を学ぶ事がおろそかになっていないかチェックしてみて下さい。
喉がリラックスしたまま高音域を強く歌える声は多くの歌手が望む宝物です。
喉に負担をかけずに出された高くて強い声は、その声そのものが感情の解放をも促進します。ミックスボイスの獲得は声優・俳優の方にもお勧めします。豊かな感情表現には、豊かな声域が必要です。