このページは主には声優・俳優のために書かれています。歌っていて声がひっくり返る方の参考にもなります。歌う想定でこの問題を解決するヒントは、他にも本当の腹式呼吸や、歌が上手くなる方法が分かる13のQ&Aの2.02太い高音を出したいのですが細くなってしまいますなどで見つかります。よろしければ参照下さい。
感情のエネルギー
感情のエネルギーは息を吐く筋力と、声帯を閉じる筋力を強力に高めます。エネルギーがバランス良く分配され、2つの筋力が釣り合えば声は力を得ます。感情の高まりによって、声が高く強く伸びやかになるのはそのためです。
ただし、実際にそうバランスよく筋力が釣り合う事はまれです。
ホンの少し感情が高まるだけで、息使いが荒くなり呼気(吐く息)が強まるのに対し、声帯の方は殆んど影響が現れない事が多いです。
殆んどの人の声帯は、その人の呼吸筋に比べると極度の運動不足です。だから反応がにぶいのです。
そのため、感情エネルギーによる爆発的な強い息に不意打ちを食らい、声帯が弾かれてしまう(閉じていられなくなる)事がしばしば起こります。それで声がひっくり返るのです。
歌う時に声がひっくり返る場合も、強すぎる息に声帯が弾かれています。地声のまま無理に高い声を出す人は、上半身を固めて息も緊張しています。そのような方はミックスボイスのページを参照下さい。
声がひっくり返るのを防ぐ
想定外の強い息も受け止められるよう、基礎練習によって声帯自体の適応力を上げておくのは大変良い事です。ただし、強い息を真正面から受け止めるだけが適応力ではありません。
声帯が感情エネルギーの受け取りに成功して、強い呼気(吐く息)を上手くさばいている時も、単に強く閉じて対抗している訳ではありません。色々な方向にバランス良く伸びて抜け道を作り、上手く息を逃がしています。
声帯表面の粘膜は鍛えられません。声を出すたびに、緊張した息と力くらべの勝負をしていれば、その内ひっくり返りは無くなるかも知れませんが、その勝負の緊張により声帯粘膜を傷める危険性は高まります。
顔のインナーマッスル
声帯の適応力を伸ばすにはちょっとした助っ人が必要です。その助っ人とは、感情に反応し、声帯の動きをサポートしてくれる顔のインナーマッスルです。
大多数の人の声帯が、呼吸筋群に比べて感情の影響を受けにくいのも、顔が運動不足で声帯の動きも重くなっているからです。
顔と言っても表層の表情筋ではありません。もっと奥です。顔というより頭蓋内部の筋肉です。
母音のクオリティーが感情表現を本物にする
Q&A 3.1 滑舌よくしゃべると喉が疲れてしまいますで、感情と母音発声について解説しております。そこでも述べていますが、口や喉ではなく、頭蓋の奥に母音共鳴を感じ取る事が大事です。
それが上手く行くと、人間本来のバランスで感情エネルギーが各エリア(呼吸器系=呼吸筋群、発声器官=声帯、調音器官=喉や頭蓋の共鳴)に分配され易くなります。つまりは感情表現そのものがより本物に近くなるという事です。
口先や喉だけで発声していると、感情が生み出す物はフィーリングよりも緊張の方が多くなります。その緊張はそのまま口と喉に掛かって来ます。
声帯のコンディション
例え声がひっくり返る事がないとしても、緊張した発声は喉を疲れさせ、声帯を傷付けます。そのままでは声のコンディションは悪くなるばかりです。
喉に優しい柔らかな呼吸を身に付ける事も大きな助けになります。呼吸法に関しては本当の腹式呼吸を参照下さい。必ず目からウロコが落ちるはずです。
正しいボイストレーニングで口と喉の緊張を取り去ってあげて下さい。声帯は一生使うあなたの大切な道具。プロの役者になるなら商売道具です。買い替えは出来ません。