言葉が伝わらないのは、滑舌のせいなのか?声が通らないからなのか?人によって違うでしょうが、どちらの場合でも重大問題です。
言葉が伝わらないのは滑舌の問題?
普段の会話では言葉が通じるのに、役者として話した時だけ通じないなら、基本的には滑舌の問題ではありません。
滑舌(言葉の明瞭度)がどうしても気になる方はQ 3.1 滑舌よくしゃべると喉が疲れてしまいますをお読み下さい。
その文中「多くの人は余波(口周りの動き)を鍛えようとしますが、それは発声の効率を悪くし、あなたの口と喉をひどく緊張させます。原動力の方を鍛えれば、表現も発声も、今の何十倍も楽になります」の意味を理解し、基本ボイストレーニングを練習して下さい。
余計な力が抜けて安定性が増すでしょう。
言葉が伝わらないのは声が通らないから?
では、声の通りについて解説しましょう。
声が通るためにはある程度の声量は必要ですが、怒鳴るのではなく共鳴(体内各所の響き)を利用します。胸や口腔も響きますが、最もよく響くのは頭蓋です。息がスムースに流れる事でそれぞれの場所がよく響いてきます。
喉を開くという事
喉を開くという事が本当に上手く行くと、その空間で増幅された共鳴が声を活発化させます。
更に、喉仏が後ろに引き付けられて、声帯の振動を頸椎(首の骨)に直接伝えるので、背骨全体が振動し、全身の骨格に響きが伝わります。これらの条件整備で声の通りは飛躍的に改善します。
ただし「喉を開きなさい」と一言で済ますボイストレーナーは多いですが、喉のどこを、どうやって開けば良いのか。キチンと説明できる人を見た事がありません。
上向きフィールと下向きフィール
あくびで喉を開く練習も一般によく行われますが、これは加減を知る事が大切です。
あくびで喉仏が下がると喉の開放感が感じられますが、あまりオーバーにやると下向きの緊張が強くなり、身体を固くします。
そしてあくびをした声を聞けば分かるように、声帯の閉鎖は甘くなり声の輪郭がぼやけてしまいます。
実は喉仏を下げるのはあまり勧められません。
熟練しないと難しいですが、あくびを利用するなら「頭の中の筋肉が上に集まる」のを感じて下さい。大別すれば上向きに働くフィールですが、下向きのフィールとも相性は良く、喉仏の自然な下降をサポートします。
ただし喉仏を下げ過ぎて緊張があると、このフィールは消失します。
上向きのフィールと、下向きのフィール。これらは、それぞれに協調する沢山の筋肉運動で成り立っています。この2チームがバランス良く拮抗すると、ベストな加減で喉が開いて声が響きます。
社会生活に毒されていない自然体のお手本として、赤ちゃんや動物の名がよく挙げられますが、彼等は筋力のバランスが良いので普通にあくびをしても上向きのフィールを強く宿しています。
上下バランスの話をしたら、もう一つ大切なバランスの話をすべきでしょう。それは前後バランスです。実際そちらのバランスこそが声を通す仕事の主役です。
話しが長くなるのでQ 3.4 声が通らないのです。声を前に出す方法が分かりません。でそれについて詳しく触れたいと思います。よろしければ参照下さい。