もちろんボイストレーニングで声帯の機能や持久力は改善します。いま現在ひどく喉の調子が悪いなら、先に耳鼻咽喉科で声帯の状態を確認する事が望ましいです。場合によっては投薬を受ける必要があるかも知れません。
声帯の疲労を回復させるには
あなたの活動内容がボーカルであっても、演劇であっても、声帯の疲労を甘く見てはいけません。プロ・アマは関係ありません。あなたが歌や芝居を愛するなら、それはとてもシビアな問題です。
まずは《声帯の回復》が必要です。もし可能なら、声を出さない「喉の休養日」を取って下さい。あとは、水をよく飲むこと。どうしても話さなくてはいけない時は、小さな声で。ただし、ささやき声は声帯粘膜を乾かすので避けて下さい。
更には《喉の疲れない発声法》の習得も必要です。これは時間が掛かります。正しいボイストレーニングを行えば時間は短縮できますが、どんなに早くても半年以上は掛かるでしょう。
回復より早いペースで疲労すれば蓄積する
声帯は基本的には筋肉ですが、表層は靭帯と粘膜で、非常にデリケートな組織です。ちょっと無理をしてもすぐに疲労してしまいます。
数日間おとなしくしていれば普通は回復しますが、完全に回復する前に無理をすれば、声帯は休まる暇がありません。疲れはどんどん蓄積されていきます。
しかしプロの声優・俳優・歌手は、喉の不調で何度も仕事を休む訳には行きません。
アマチュアでも活発に活動している劇団の役者や、大音量の中で歌うバンドのボーカル、カラオケに通い詰めの愛好者の方は、声を使う機会が多いのでそれだけ声帯も疲労するでしょう。
ボーカルの場合は、高音の発声法であるミックスボイスを失敗して喉を緊張させる人が多いです(高音が疲れるボーカルの人はミックスボイスのページも参照下さい)。
声帯の疲労を感じた時こそボイストレーニングを始める時期です。
本来なら問題の起こる前にボイストレーニングを始め《喉の疲れない発声法》を習得しておきたい所です。既にそれなりの期間ボイトレを実践していて進歩が無いのなら、その内容とクオリティーを見直すべきです。
声帯結節とポリープ
無理な発声を続けていると声帯表面に結節(けっせつ=指にできるペンだこの様な突起)が出来ることがあります。
声帯ポリープという言葉も聞いたことがあると思います。
結節は長期に渡る組織への刺激(無理な発声)が原因です。一方、ポリープは短時間に掛かった無理が原因で発症します。ポリープは声帯表面に出来る血豆のようなものです。
ただ一度の無理が過ぎても、ポリープが出来てしまうことがあります。一晩のカラオケで発症する場合もあります。深酒と無理な怒鳴り声という最悪の条件が揃うためです。
声帯を疲れさせる2つの原因
言うまでもなく、声帯を疲労させる一番の要因は過度な緊張です。無理に高い音を出したり、大声を出すことで声帯は緊張します。
正しいフォームで出せば、高い声も大きな声も、声帯への負担がほぼゼロで発声できます。
正しいフォームは、喉や顔の奥を中心に形成されます。それが声を強力に響かせます。声帯をキチンと閉じるサポートもしてくれます。ボイストレーニングが難しいのは、この目に見えないエリアの運動を手探りで発見していくからです。
この複雑なリハビリを、シンプルな練習の組み合わせで実現するのが本校のベテラン講師です。
もう一つ、声帯を疲れさせる大きな原因は乾燥です。乾燥によって声帯粘膜の水分が奪われると声は出しにくくなり、つい無理に力んでしまいます。
乾燥については自分で対処可能です。まず普段から水をよく飲むこと。可能なら1日1リットルは飲んで下さい。ジュースやお茶を飲んでも構いませんが、それらはカウントには加えません。あくまでも水で1リットルです。
水を飲んでもすぐに声帯への水分補給が行われる訳ではありません。喉のパイプは口のすぐ下で、肺に続く気管と胃に続く食道の二股に分かれます。
声帯は気管にあります。飲食物が喉を通る時は気管の入り口が密封されるので、飲んだ水は全て食道へと降りて行きます。水は声帯には出会いません。飲んだ水は消化器官を通り、うんと遠回りをして声帯に補給されます。
それから空気が乾燥する時期はマスクの着用も是非おすすめします。
声帯を鍛えることは出来ない
声帯の表面は粘膜です。粘膜は傷付きやすいので、鍛えることは出来ません。
声のボリューム、歌い続ける持久力、音域の広さが欲しい時は何を鍛えれば良いのでしょう?
それは声帯の運動力です。耐久性ではありません。緊張せずにしっかり声を出す運動力。それがあれば喉は疲れません。
声帯粘膜の下の層は靭帯、その下の層は筋肉です。声帯の本体は筋肉です。
声帯の周辺部にも間接的に声帯を色々な方向に引っ張る筋肉が沢山あります。
この筋肉群が、より自然で、かつ強力な運動が出来るようエクササイズを行います。このエクササイズこそがボイストレーニングの正体です。そういう認識の無いボイストレーナーもいます。
正しい声はパワフルになる
エクササイズとしてのボイストレーニングを理解したトレーナーと一緒に練習すれば、より質の高いトレーニングが出来ます。
筋トレというイメージが強過ぎると、結局は強く発声し過ぎて粘膜を傷付ける事になるので、慎重に行って下さい。先ほど述べた通り、喉から顔の奥のエリアを中心に正しいフォームを築く事で、声の響きは増幅されて勝手にパワフルになります。