本当のボイストレーニングの姿
歌う時や演技する時の声は、音域、声量、表現が、日常の発声とは大きくかけ離れます。情熱的なハイトーンや、胸を撃ち抜くパワフルなセリフの数々。こうした表現には、特別な声が必要です。
本気で上手くなりたい人は、基本の呼吸と発声を学び、あなたの中からその声を探し出して下さい。簡単ではありませんが、正しくレッスンすれば必ず手に入ります。その声を持つことで、あなたの歌やセリフはめざましい発達を遂げます。それが本当のボイストレーニングの姿です。
情熱と表現力に満ちた、歌やセリフは、基本テクニックを土台として成り立っています。
あなたが、本当に確実に上手くなりたいなら、手に入れるべき土台(基本の呼吸と発声)が具体的にどんな要素なのか、大まかに知っておくのは良いことです。
・力を秘めつつも自然で無理のない呼吸
・高音でも変わらない喉のリラックス
・声帯に備わる運動力
・声にボリュームを与える共鳴
これらの要素を緊張なく支えてくれるのは、バランス良く発達した筋肉のチームワークです。
チームに参加する全身の筋力バランスが良いのは大切な事です。本物のボイストレーニングはリラックスした自然体をベースに発展して行きます。お腹や、喉、口、顔など、特定の筋肉に意識がかたよらないようご注意下さい。
初心者やボイトレ未経験の方でも、余計なクセの無い方の土台はこんな感じです。実はこれはそんなに悪くありません。
充分な状態ではありませんが、このくらいは全く問題ありません。このまま土台をバランス良く増築し、歌やお芝居で使える声にレベルアップするのは、本校ベテラン講師にとって難しいことではありません。
緊張とクセが土台を歪めてしまう
ボイトレ未経験でも自己流のクセが強い方は勿論おられます。しかし土台のバランスが歪んでしまうほど強いクセを持つ方の多くは、既にどこかでボイトレを経験された方です。
大多数のスクールやトレーナーは、特定の筋肉(腹筋や横隔膜、喉まわりの筋肉)で声を支えるのだと説明します。しかし実際のところ、それらの筋肉は意識の外にある時に本来の力を発揮するのです。意識した途端、それらはエネルギー過剰になり緊張します。
腹筋や喉など、部分的に強い緊張を持ったまま練習を繰り返すと、いつしか土台の筋力は不揃いな状態に歪んでしまい、その上には歌やセリフが乗らなくなってしまいます。
ボイトレ経験者の現実
この数年間、ボイトレスクールがすごい勢いで乱立し競合しています。そのうえ、ボイトレ理論は今や業者だけの知識ではなく、ネット検索すれば誰でも閲覧可能です。
どのスクールも、科学法則や筋肉の名称を出して、専門性をアピールする必要が出てきた訳です。
科学や理論を知れば身体が動く?
自転車って自分が乗れるようになるまでは、すごく不思議な乗り物に見えます。科学の力が働いてるのは間違いありません。
自転車に乗る時に使う筋肉が、いくつあって、どんな名前で、どう動くか、それを知らないと自転車には乗れないでしょうか?
いいえ。乗れる人はそんなこと気にしません。そして自由に走り回ります。理屈など知らなくても、身体でコツを覚えれば自由自在に操れます。大切なのは一言でいえばフィーリングです。
ボイトレにもそれと似た所があります。理屈ではなく、ひたすら集中して良いフィーリングを探すのが上達のコツです。
良いフィーリング、良い感じ、良い声が出そうな雰囲気。
それらは非科学的ですが、あなどれません。ベテラン講師とのレッスンでは、その単純な感覚が最高の理論に通じる切符です。
勘をたよりに感覚を磨く方が良い
ボイトレをコーチする側に限って言えば、理論や法則に通じているのに越した事はありません。しかしコーチを受ける人にとっては、理論が邪魔になる場合が多々あります。もしも、あなたが指導者を目指す人でも、まず理屈に捉われない生徒としてレッスンを楽しむ経験をすべきです。
過去にレッスン経験のある方達は、スクール在籍中、理論を求め、コツを探し、沢山の答えを探し求めたことでしょう。それは当然です。
一体どこでどう支えて発声すれば、思い通りの歌い方や演技が出来るのか?誰だってみんなそれを知りたいのです。
あなたが得る正しい答えはすべて「理論」ではなく「感覚」です。ですからボイストレーニングを受けるコツも、自然なひらめきや勘を頼りに、自由にレッスンを楽しむことです。
本当に答えを知っているボイストレーナーは、言葉や理論では答えません。自然に答えが(良いフィーリングが)見つかるよう、練習メニューを組み換え、どんどん先に(勿論丁寧に)レッスンを進めます。それこそが最高のサポートです。
あなたの自由な「感覚」が影響を受けないのなら「理論」を知るのはもちろん悪いことではありません。
ボイトレスクールを厳選すべき理由
あなたが「感覚」を優先にすることに成功していても、無能なトレーナーが間違った筋肉に焦点を当ててレッスンすれば、あなたの勘はやがて的外れな方向を向いてしまいます。そして間違った筋肉を捉えます。ボイストレーナーやスクールを厳選すべき充分な理由です。
残念なことに、間違ったバランスで筋肉を使わせるボイストレーニングは意外と定番です。皆さんよくご存知の腹式呼吸からして、それを練習すること自体がすでに間違いなのです。
腹式呼吸は、軽い準備運動として本校も行います。しかし、それはあくまでも他の呼吸法とミックスするための準備です。ミックスをしない腹式呼吸は、それ単体で見れば間違った身体の使い方の最悪パターンです。腹式呼吸法について詳しくはこちらを参照下さい。
ほとんどの方は、呼吸法は腹式呼吸しかやりません。お腹だけで声を支えるとリラックスは難しくなります。自由なフィーリングもつかめません。
呼吸も発声も全身運動です。生まれつき全ての筋肉が最高のバランスで働いてくれるという奇跡に恵まれない限り、正しいボイトレメニューを友として練習に励む事こそが、絶対確実に上手くなる唯一の方法となります。